アニメじゃない

10月 30th, 2007 by admin

 ニコニコから消されるアニメのDVDは買うべきじゃないらしい。

http://d.hatena.ne.jp/pmoky/20071028/p1

 まあそれに対して、様々な反論が渦巻いていて、尚且つテレビ屋やら実際のスタッフやらがコメントを残している。

http://soulwarden.exblog.jp/6469132/

 たとえばこちらだとかね。

 まあいちいちごもっともなんだが、「何が悪いか」の原因の擦り付け合いという点では、ユーザ側と制作者サイドが一切譲らない平行線を辿っているように見える。

・どうして僕らが高いお金を出してDVDを買っても、スタッフに届かないんですか。

 まずここである。

 広告代理店やテレビ局が中抜きしまくっているからだよ! という説がユーザ側からは出ていて、(一部制作者サイドからも)それに対してテレビ屋
さんは、「そもそも市場規模が他の番組とは違うし、すっごく小さい規模だから、僕らは少ない予算で仕事してるだけなんだよ」と言う。

 まあ、このままだと、プロデューサーがラジオで発言したと言う、

「某代理店に、”何もしてないのに何でお金払わなきゃいけないんですか!?”って聞いたら、”既得権益です”って言い返された(笑)」

 という辺りの発言が有力視されて、今のところ声をあげない広告代理店が悪者になるんだろうね。

 という構図はこの際置いておいて、じゃあ何でまたこういう「アニメ業界は死ぬほど厳しいよ!」という話が事ある毎に僕らのホットTOPIXになるんだろう。

 恐らくは、発端の構造自体にある。

 そもそも、手塚先生がアトムをアニメ化する時、前例が無い中で手段を模索していった結果、

 ・人件費が馬鹿みたいにかかる

 ・一人じゃ作業量がとても追っつかない

 という問題にぶち当たったはず。そこで、手塚先生は予算を低く抑えるために、人件費を削り、作業を分担してアニメを作りました。その慣習が今でも根付いているんだよ。

 というのがアニメの発端だと思う。

 手塚先生は数多くの事を成し遂げたけど、その多大な功罪の中じゃ罪とされる方だと思います。

 で、この二つの打開案が現在に至る、

 ・人件費がべらぼうに安い

 ・殆どが外注さん。むしろ外国に頼まないと作業が進まない。

 という構図を産みだしている訳で。この辺までは基礎知識ですね。

 で、問題は「手塚先生はそりゃ他に著作権はあったから良いかもしれないけど、フツーのスタッフはどうするのさ」って問題になる。

 たとえば僕らが良く知ってる例をとると、マンガ業界だと、著作権とか他の権利だとかが、マンガ家に振られる。出版社も、アニメ化した人も、マンガ家もそれなりに現状で文句は無いはずです。凄く巨額に及ぶ利権を持った人間も数少ないけれど居るわけだし。

 これが出来る理由は、

 ・マンガ家は分業じゃなくて、大抵一人だから

 というのが前提条件な訳です。

 アニメの場合は分業化が進んでいる都合上、一個の作品を作るのに莫大な人員が絡んでくる訳で、それをポンと誰かに渡すというのがちょっと厳しい
上に、それが一般的な慣習になっていない。だからスタッフは「自分の著作物だ」と言い張る事が出来ないし、権利者団体やテレビ屋、広告代理店なんかに強く
出る事も出来ない。

 まあたまーに著作権を総監督が持っている場合もあるみたいですけど、現状を構造から打破できてる様には思えないし、巨大利権に繋がってる風もありません。

 でもこれをね、20年経っても未だに作られ続けているあのロボットアニメの監督とかが利権を握ってたと考えるとちょっと影響を考えてしまいますねえ。

 だってさ、もし監督が玩具屋やテレビ屋相手に「お前らに商売をさせてやる」という姿勢で仕事出来たら、払われる給料だってもうちょっと強く出ら
れるんじゃないの? 予算が潤沢じゃないのは重々承知だけれど、現状よりはもうちょいどっちにお金を引っ張るかの話になった時に、構造こそ打破できなくて
も比率に口出す程度は出来るんじゃないの? とか思ったりもする訳です。強く出られないって時点で交渉の席に座る事も出来ない現状よりはマシだよね。

 で、もう一点はやっぱりスタッフの冷遇。

 会社によっては社員待遇で年金とか福利厚生とかを受けさせてくれるって所もあるようだけれど、大半は「所属」扱いで社員待遇じゃない筈だよね。

 えー、この辺は恐らく法的なものも絡むと思うんだけど、社員で雇うとお金がかかるし、恐らく残業だとかの概念も発生するからだと思うんだよね。

 でも他の一部の会社はどうも社員待遇らしいし、それをアニメータさんが確実に受けられる環境ってのはどうしても最低限の義務の様な気がしますよ。

 まあ凄いお金が発生するとは思うけれどね、そこで人が流れないとウソだよね。社員待遇にしてくれるならそっち と尻軽に動かないと会社も考えないよね。

 そこをね、「ああいう業界に居る時点で薄給に耐えねばならん」「世捨て人じゃなきゃつとまらん」みたいな、精神論じみた「金は汚いよ!」みたいな問題にすり替えてるのも恐ろしく問題なんじゃないかなと思う訳でさ。

 だってお金無いと困るよ? おまんま喰わないとクリエイトどころの話じゃないですよ。忙しいは正義みたいな美学も置いておいて、その辺の環境配備をしないと問題外なんじゃないですかねえ。

 ま、簡単な話DVDを買う買わないで問題はなーんにも解決しないと思うんだよね。結局、構造自体に問題があるのだから、そこをどうやってクリアしていくのかを明確にしていかないと、何も変わらんのだよね。

 そして僕らに出来る事ではないのですよそれは。アニメのプロデューサーが広告代理店を悪者にすれば問題が解決する訳じゃない。ニコ動ごときの市
場規模でなんかやっててもしょうがない。大体、妖のDVDがニコ動で300万円出た! って言ってるみたいだけれど、300万って個人の年収以下だぜ? 
人一人雇えない程度の吹けば飛ぶよな微細な金額なんだぜ? これが3000万、3億、30億となれば話は別だけど、今のところあんまり誰の財布も暖かくで
きてないよね。同様に冷たくも出来てない。

 結局ね、もう最初にも書いたけれど制作者サイドとユーザがお互いに擦り付け合いをやっているだけに過ぎない訳で。ユーザはタダで見てます。こ
れは問題外に悪いし、それを見て放置して、構造的な見直しをしないアニメ業界人も片腹痛い。ここで言う構造的な見直してーのは、広告代理店やらテレビ屋や
らから金を毟れってんじゃなく、自分たちの立ち位置の改善ね。皆さん自分の頭の上のハエを追うべきなんですよ。ね。だから僕は会社に行くよ。

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