初音ミクと安心メソッド

10月 17th, 2007 by admin

 判らない事を放置しておくのは、どうにも気持ちの悪い事だ。だから人は無理矢理にでも理解をしようとする。

 件の初音ミクのニュース動画を見て、アッコにおまかせのメインとなる人間、和田アキ子は「はっきり言わせていただく、わかりません」と言っていた。

 つまりだ、50またぎの既に感性の古い人間が、技術的な新しさやら、世間の動向やらを知らずに、突然のムーブメントに対してコメントを残せる余
地は、「わかりません」が精一杯なのだ。そして、あの映像は「わからない」という結論を導き出すだけの映像にしか過ぎない。オタクを叩く意図? 違うの
だ。あの映像は、オタクは奇異で、我々とは違う文化圏の人間なんです、判らないでしょう? とブラウン管の向こうのマジョリティに向けて投げられた言葉で
しかない。

 しかも、それは初音ミクという非常に革新的なソフト、そしてムーブメントに対して本来即座に情報をキャッチしなければならない筈のマスコミと
いうメディアが、一切理解をしていないという悲しい現実でもある。マスコミだけが映像を発信し、マスコミに持ち込まねば多くに情報を流布できない。そう
言った状況に胡坐をかいて、これからもそういうあり方をしようと思うのならば、明らかに後発で乗り込んできた上に、今回のように理解をしていない見方など
問題外だろう。一介の新参ブロガーですらもあんな無理解さを示さない。

 たとえ、実際にはきちんと理解していて、世論誘導のためにああいった事をしたとしても、いくら何でも器が小さすぎる。第一、そう言った事をせ
ずとも、きちんと技術的側面から説明し、それがネット内で爆発的なムーブメントを起こした経緯をきちんと説明すればいい。たったそれだけでいい。そうすれ
ば火種を生む事無く、話題にも一切上がらず、僅か3分弱の特集はニコニコに上げられ、殆ど誰も見ずに一週間以内に削除されるだけに留まっただろう。

 そう、普通に放送しただけでは、マスコミだけが映像を発信し、マスコミに持ち込まねば多くに情報を流布できない筈のマスコミが、何の印象も残
せないというのもまた事実なのである。第一、例の特集の冒頭は、「視聴者は知らない。しかし独自の情報網を持っている人間は、既に周知の事実である」とい
う切り口から始まる。

 その時点でマスコミは遅れを取っていて、尚且つその情報がマスコミによらず、既に多数に流布しているという時点で、マスコミに介入の余地はな
い。行き渡るべき人間には既に行き渡り、行き渡る必要の無い人間には行き渡らない。「わからない」なんてメソッドで判ったつもりを装う事しか出来ない程度
の、精神的動脈硬化を起こした人間に、無理矢理ご意見番をやって頂く必要など全くない。

 ただ、ブラウン管の向こうのマジョリティは、「なあにこれ、全然わからないわ」と若年層に聞き、若年層はしたり顔で答えるだろう。その点では、視聴者の意見を代弁しているので、或る意味ではぎりぎりの意味を保ってはいる。

 しかしながら、別にそんな必要は全くない。第一、既に初音ミクなんざ我々にゃあ古い話だろう? 知らない奴に説明する程の事もない。ネット上の
情報など、三日経てば賞味期限が切れる。既に発売から何ヶ月も経ったソフトの存在など、それだけでは一切意味がない。付加価値を付けた上で情報を提供する
のが集金能力を有したマスコミの義務である。あんな手前味噌な構成で、ギャラもあるんだかないんだか判らない程度の小規模な特集で、予算のある、しかもお
昼時の番組がああいう放送をするのは怠慢以外の何者でもない。情報という物に携る者が、それがどのように流布し、どのような物なのかを第三者に説明出来な
い程度の構成の物を作ること自体が問題外だ。情けない。

 これだけの悪印象を与える事がネット文化が栄えた現状に対して、マスコミの出来る最大限の抵抗ですと言うのならば納得はするのだが、この反応を見る限りだと誰も誘導すらされていない。その程度の技術すら無い。

 いやはや、安心したのはマスコミのお里が知れた、一視聴者たる我々の方なのかもしれない。ご立派ですね。

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One Response

  1. samai Says:

    まああれだ、秋山真之の言ですね。かきがらの付いた船の移動速度は、自分で思ってるよりも遅くなってるんですよ。

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